財務も経理も企業の中でお金や数字を扱うという意味では同じ仕事です。
しかし財務と経理は違いがあり、必要な知識も資格も大きく異なります。
この記事では、財務と経理の違いや、それぞれの業務に必要な資格を詳しく解説していきます。
財務と経理の違い

「財務」と「経理」は同じ意味で使われることが多いですが、お金を管理する上でまったく異なる2つの側面を指しています。
財務は主に将来のプロジェクトのための資金調達に関係し、会計はすでに使われたお金を管理することに重点を置いています。
ここでは、財務と会計の役割の違いについて、より詳しく説明します。
財務は資金の調達が主な仕事
財務部の主な仕事は、会社の決算書のチェック、「使うお金の予算計画」、「使う資金の調達」、「手持ち資金の管理」です。
財務担当者の主な仕事は、企業の経営結果である財務諸表を管理・分析することです。将来の支出を計画するためには、会計係は支出するための資金を調達しなければなりません。
経理のように、すでに発生した売上や支出に関する預金や貯蓄を管理し、会計処理をするのは財務係の仕事ではありません。
経理は使ったお金の処理が主な仕事
経理担当者の主な仕事は、すでに支出した経費などの金銭的な記録を管理することです。
そのため、経費の仕訳や記録、また仕訳や預貯金の管理なども行います。
したがって、予算や資金調達は財務の仕事であるため、経理担当者は通常行いません。
出納、経費精算、帳簿作成、税務申告、給与計算など、すでに発生した経費や売上を管理することが経理の基本業務となります。
財務の主な仕事

財務の主な仕事は次の4点です。
- 資金調達
- 資金の運用
- 予算管理
- 監査への対応
一つずつ解説していきます。
資金調達
新規事業を始めるとき、新しい設備を導入するときなど、別途資金を調達する理由はさまざまです。
例えば、企業が資金調達のために銀行から融資を受ける場合、財務担当者は銀行と交渉して融資契約を締結する重要な役割を担っています。
同様に、株式を発行して投資家から資金を調達する場合も、調達した資金と引き換えに会社の信用を担保することになるため、金融機関や投資家との交渉が重要になります。
リスクを考慮しながら必要な資金を調達するためには、資金調達スケジュールの策定や資金調達手法の多様化が必要です。
資金の運用
会社が保有する資金を運用するのも財務の仕事です。会社の貯金を株に投資したり、債券を購入したりします。
「どれだけの資金をどれだけの期間運用できるか」を的確に把握し、会社のキャッシュフローを悪化させないようにしながら、高いパフォーマンスを実現することも財務の重要な仕事です。
資金をどのように集め、何に使うかを決めるのが財務。会社が安定的に成長するためには、事業に必要な資金を会社全体に分配する必要があります。
財務は、会計士が作成した決算書や財務諸表を分析しながら、財務戦略を立て、資金の使い道を検討する野が重要な仕事です。
予算管理
各部門に配分された資金が適切に使われるようにするのが、財務の仕事です。これには、次年度以降の予算の策定と管理も含まれます。
お金が適切に使われないと、将来的に予算や資金が不足し、必要な支払いに資金が回らなくなる可能性があり、会社の信用や今後の取引に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため企業価値の維持・向上のためには、計画的な資金配分が重要です。
監査への対応
監査は、企業の財務に不正や問題がないことを確認するために行われ、財務部門は監査役に対して財務状況を説明して対応が必要となります。
監査は、企業にとって、財務が健全であること、将来的に経営難に陥る可能性がないことを確認するために重要なプロセスです。
財務は、監査法人に財務状況の説明を行い、要求に応じて関連書類を探し出し提示する責任があります。また、監査法人からの要請に応えることも財務の重要な仕事です。
財務の仕事に役立つ資格

財務の仕事には次の4つの資格が役に立ちます。
- ファイナンシャルプランナー(AFP)
- ファイナンシャル・プランニング(FP)技能士
- 公認会計士
- 税理士
それぞれの資格の内容や、業務に対してどのように役に立つのかなど、詳しく見ていきましょう。
ファイナンシャルプランナー(AFP=FP2級)
受験料 | 8,700円(税込) |
資格取得までの期間 | 3ヶ月〜6ヶ月程度 |
合格率 | 40%程度 |
ファイナンシャルプランナーは、個人の資産形成、教育資金、老後資金、資産運用、不動産投資、相続などのライフプランニングを行う資格です。
AFPの上位資格としてCFPがあります。ファイナンシャルプランナーは、お金の流れや将来への備えなどを総合的に検討できるため、企業の財務戦略策定にも有用です。
ファイナンシャル・プランニング(FP)技能士
受験料 | 8,700円(2級) |
資格取得までの期間 | 3ヶ月〜6ヶ月程度 |
合格率 | 2級(2021年9月)学科試験:50.56%実技試験:60.26% |
FP技能士は、ファイナンシャル・プランナーのスキルを証明する資格です。日本金融財政事情研究会(きんざい)と日本ファイナンシャル・プランナーズ協会(JFPA)が運営しています。
3つのレベルがあり、2級はAFPと同程度の難易度と言われています。
金融機関全般だけでなく、あらゆる企業で財務戦略の策定や資金調達に役立つ資格となり重宝されます。
公認会計士
受験料 | 19,500円 |
資格取得までの期間 | 2年〜5年程度 |
合格率 | 10%程度 |
財務諸表が正しく記録されているか確認する会計のスペシャリストです。
財務諸表の作成から財務分析、M&Aまで、お金に関するあらゆる専門知識をより幅広く身につけられます。
このように幅広い専門性を身につければ、予算編成や資金調達、財務戦略策定などの業務にも余裕を持って対応できるようになるはずです。
税理士
受験料 | 1科目で3,500円、2科目で4,500円、3科目で5,500円、4科目で6,500円、5科目で7,500円 |
資格取得までの期間 | 2年〜5年程度 |
合格率 | 1科目10%程度 |
税理士は、税務に関する専門家です。財務諸表の作成・分析、財務・税務戦略の立案などを担当します。
また税理士資格を取得することで、独立開業も目指せます。
経理の主な仕事

経理の主な仕事は次の通りです。
- 現預金管理
- 請求と支払い
- 記帳と管理
- 集計と会計書類作成
一つずつ解説していきます。
現預金管理
経理担当者は、会社の預金や貯蓄を管理する責任を負っています。
主な仕事は、預貯金と現金の残高が日々帳簿通りになっているか確認することです。
そのために、頻繁に銀行を訪れ、預金や現金の入出金を行います。
請求と支払い
請求書発行とは、取引後に請求書を発行し、代金を回収することです。売上管理、入金処理、データ入力、チェックなど、幅広い業務が含まれます。業種を問わず、請求漏れがあると資金繰りに影響するため、どの会社でも重要な業務です。
仕入先やお客様との取引になるので、請求項目や金額、住所などを細かくチェックし、間違いがないようにする必要があります。
記帳と管理
領収書や請求書などをもとに、日々の取引を勘定科目ごとに仕訳帳に記録していきます。
最近では、これらの作業を会計システムで行うことが一般的になってきており、記帳の代わりに会計ソフトに入力を行います。
会計は、複式簿記と呼ばれる会計ルールに基づいて行われる。複式簿記とは、お金の流れとその原因を把握するために作られたシステムである。複式簿記では、1つの取引を借方と貸方に分けて記録する。「借方」「貸方」という言葉にはあまり意味がなく、左側が借方、右側が貸方である。
例えば、商品を現金で1,000円購入したときの取引は、(借方)購入品1,000/(貸方)現金1,000となる。借方、貸方ともに同じ金額が計上されます。
このように記録することで、仕入れに使った金額が把握でき、現金の増減も把握ができます。
仕入、売上、旅費、消耗品などの勘定科目は、お金の流れがどのように発生したかを把握できます。
現金、預金、売掛金、買掛金、貸付金、借入金などの勘定科目は、いずれもお金の流れを把握する上で重要です。
集計と会計書類作成
経理は、元帳の記入内容をまとめ、月次試算表や決算書類を作成する役割を担っています。税理士がいる場合は、税理士が試算表や決算書の作成を代行してくれます。経理担当者の仕事は、元帳と領収書を顧問税理士に提出することです。
経理の仕事に役立つ資格

経理の仕事には次の4つの仕事が役に立つでしょう。
- 日商簿記検定
- MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)
- 経理・財務スキル検定(FASS)
- 経理事務パスポート検定(PASS)
一つずつ解説していきます。
日商簿記検定(2級)
受験料 | 4,630円(税込) |
資格取得までの期間 | 2ヶ月〜半年程度 |
合格率 | 30.6%(2021年11月) |
日商簿記検定では、仕訳や財務諸表作成について総合的にカリキュラムを組んでいます。2級では、正確で効率的な簿記に欠かせない複式簿記を学習します。
MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)
受験料 | 10,780円または12,980円(税込)(1科目) |
資格取得までの期間 | 1ヶ月〜2ヶ月程度 |
合格率 | スペシャリスト:約80%エキスパート:約60% |
この資格は、5種類のソフトウェアに関する能力をテストします。Word、Excel、PowerPoint、Access、Outlookの5つのソフトの能力が試されます。1科目ずつ受験することも可能なので、仕事で使うソフトに絞って受験することができます。Excelに慣れていない方は、この資格を取得することで、このプログラムを使いこなすためのスキルを身につけられます。
経理・財務スキル検定(FASS)
受験料 | 11,000円(一般) |
資格取得までの期間 | 1ヶ月〜2ヶ月程度 |
合格率 | 70%程度 |
「資産」「財務諸表」「財務」「資金」の4つの分野で実践的な知識を身につけるための資格です。この資格を取得することで、会計士としての管理職レベルが一気に向上します。
経理事務パスポート検定(PASS)
受験料 | 11,000円(一般) |
資格取得までの期間 | 1ヶ月〜2ヶ月程度 |
合格率 | – |
財務会計能力検定試験(FASS試験)のうち、事務職に必要な分野のみに絞った資格です。FASSでは財務に関する知識も学ぶ必要がありますが、会計の知識だけが必要な方は、まずPASSの取得にチャレンジしてみましょう。
まとめ
財務は将来のためにお金を配分することであり、経理はすでに発生した売上や費用に焦点を当てます。
同じお金を扱うものでありながら、財務と会計は方向性が逆で、求められる知識も異なります。
資格取得を目指す人は、”自分の仕事に必要な資格は何か “という観点から、自分の仕事に最適な資格取得を目指すとよいでしょう。