2023年1月から新税制がスタートします。
1年以上前から対策をしている企業もありますが、なぜそんなに早く対策をしているのか不思議に思いませんか?
実は、事前に対策をしておかないと、不利益を被る可能性があるからです。今回は、新税制とは何か、非課税事業者にもたらすマイナス面、そしてその対策について紹介します。
インボイス制度とは?経営者・経理担当者は要チェック!

インボイスシステムの概要について説明します。具体的には以下の3つです
・仕入税額控除
・課税事業者
・非課税事業者
一つずつ解説していきます。
インボイス制度の概要
インボイス制度は「適格請求書等保存方式」とも呼ばれ、課税対象となる事業者が政府からお墨付きを得て適格請求書を発行できるようになります。この適格請求書により、事業者は課税仕入れに対する控除を受けることが可能です。
現在、日本の消費税には軽減税率(8%)と標準税率(10%)の2種類があります。
これらの税率を別々に会計処理する必要がありますが、この処理を容易にし、仕入税額控除の額面を正確に計算するために、インボイス制度が導入されています。
仕入税額控除とは
仕入税額控除とは、事業者が商品やサービスを購入した際に、売上にかかる消費税額を仕入にかかる消費税額と相殺ができる制度です。この制度により、事業者は取引に応じた適正な税額を納められます。
課税事業者と免税事業者の違い
これまでは、課税売上高が1,000万円を超える事業者が課税事業者として認められていました。しかし、インボイス制度の導入により、課税事業者でなければ適格請求書の発行が認められなくなりました。
つまり、課税売上高が1,000万円に達していなくても、「課税事業者登録申請書」を提出すれば、課税事業者になることができるのです。
非課税事業者とは、もともと課税売上高が1,000万円未満の事業者を指していましたが、今後は「課税事業者登録申請書」を提出していない事業者が非課税事業者となります。
「非課税事業者」というと特に問題がないように聞こえますが、インボイス制度導入に伴い注意が必要です。
インボイス制度導入で免税事業者にもたらされるマイナス要素

インボイス制度は、中小企業やフリーランスとして働く個人事業主にとっては、理由は非課税事業者であり続けることのデメリットがあるからです。なぜ非課税事業者のままでいることが不利になるが理由を説明します。
課税事業者からの仕事が減る可能性
購入税額控除を適用するためには、適格請求書が必要です。適格インボイスがないと仕入税額控除が適用できず、追加費用が発生します。
相手方が課税事業者の場合、課税事業者と非課税事業者で事務処理が異なるため、経理処理が煩雑になる可能性があります。
今までよりも収入が減る可能性
課税売上高が1000万円以下の個人事業主にとって、インボイス制度は所得面で大きな痛手となります。
これまで免税事業者は消費税の納税が免除されていたので、10%の消費税が丸々利益になってました。
これを “益税 “という。インボイス制度は、このような益税をなくすためのもので、売上高の少ないフリーランスや個人事業主には死活問題です。
一方、課税事業者が非課税事業者に対して、仕入税額控除が適用できないことを前提に、消費税込みの販売価格を提示するケースも想定されます。
仕入税額控除が適用できない場合、課税事業者側の消費税額が増加することになります。非課税事業者との取引を継続し、消費税額を維持するためには、本来の課税取引にかかる費用を削減するしかありません。
免税事業者のままでも問題が少ないケースとは?
インボイス制度導入後も免税事業者であり続けることは、仕事量や収入面で大きなデメリットがあります。
しかし実課税事業者のままでもあまり影響がないパターンもあります。それは、販売先となる課税事業者が存在しない業種の場合です。
例えば、お互いが非課税事業者であれば、インボイス制度は関係ないので、事業が減るなどの影響は少ないといえるでしょう。。
また別の見方をすれば、優れた人材や技術を持つ非課税事業者であれば、多少の負担が生じても契約書をそのままにしておくことが得策です。
インボイス制度が悪いと主張するのは簡単ですが、現状を冷静に見つめ、どちらが得か損かを知ることが大切です。非課税事業者であり続けることは必ずしも悪いことではないことを覚えておきましょう。
免税事業者から課税事業者へ切り替えるためにやるべきこと

課税事業者から自社事業への転換を求められた場合、非課税事業者から課税事業者への転換が必要となります。ここでは、実際に課税事業者への切り替えを行う際に必要な手続きについて説明します。
適格請求書発行事業者の登録申請を行う
課税事業者への切り替えには、適格請求書発行事業者登録の申請が必要です。
インボイス方式では、課税売上高が1,000万円以上であれば、課税事業者に自動的に切り替わるわけではありません。課税事業者は、税務署に適格請求書発行事業者登録の申請を行うことにより、課税事業者にれます。
現在の期限は2023年3月31日です。e-Taxでの登録申請も可能ですが、期限ギリギリに申請するとアクセスが集中する可能性があるため、早めの対応をお勧めします。
請求書を変更する
今までの請求書は「区分記載請求書」といって、軽減税率が適用されるものであればその項目が書かれていました。適格請求書に切り替える際には、
これらの項目に加えて、適格請求書発行事業者としての登録番号と、税率ごとの消費税額を記載が必要となりました。
免税事業者から課税事業者になった場合に対応すべきこと

免税事業者から課税事業者になった場合、どんなことに対応をしていけばいいのか、インボイス制度を円滑に取り入れていく際に、経営者などが注意していくべきことをまとめました。
本則課税と簡易課税の選択
本則課税は、売上にかかる消費税から仕入にかかる消費税を差し引いて計算する厳密な方法です。
一方、簡易課税制度は、売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を差し引くところまでは本則課税制度と同じですが、みなし仕入率を適用して計算するものです。
仕入率は業種によって異なるため、業種ごとにみなし仕入率が設定されています。
簡易課税制度では、仕入れにかかる消費税の計算が不要になるため、事務負担が軽減されます。課税売上高が5,000万円以下の事業者は、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出し、承認を受けることができます。
しかし、現在経費の少ない事業者が、ある程度まとまった経費が発生する場合には、本則課税の方が有利になる場合もあります。通常の課税制度に戻るには最低でも2年かかるので、事業者は計画的に行動することをお勧めします。
経過措置の積極的な活用
企業が知っておくべき経過措置がいくつかあります。ひとつは、仕入税額控除です。
実は、インボイス方式導入後の最初の3年間は仕入税額控除の80%、後半の3年間は仕入税額控除の50%が適用されます。
これにより、免税事業者のままでいることのデメリットが軽減されるはずですし、切り替えるかどうかを判断するために6年間の猶予期間が設けられています。この期間を利用して、課税事業者になるべきかを判断してください。
納税資金の確保
課税事業者になると、これまで納める義務のなかった消費税を納める必要があります。この納税義務を果たすためには、毎月一定額の資金を積み立てたり、専用のローンを利用しましょう。そうすることで、新たな税負担が発生しても、事業を継続することができます。
インボイス制度に対応した経理システムの導入
課税事業者になった場合、相手が課税事業者である場合と非課税事業者である場合の請求書を区別して作成する必要があります。また、適格なインボイスを受け取ったものの、それが正しいかどうか照合する必要があります。そのため、他の納品書と抱き合わせになるなど、経理担当者の仕事が増えることは確かです。
この作業を容易にするために、請求書システムに対応した会計システムの導入をお勧めします。このシステムを導入すれば、登録番号を自動的にデータ化するなど、作業工程を削減することができます。PDFや紙など様々なフォーマットに対応することで、入力内容の確認やペーパーレスでの管理も可能です。
電子帳簿保存法も施行され、クラウドサービスを活用した会計システムを導入することで、経理の負担を軽減しつつ、安全・安心にインボイスシステムの導入に対応ができます。
まとめ
今回は、インボイス制度について説明しました。急いで課税事業者になるのではなく、本当に課税事業者になる必要があるのか、非課税事業者のままで支障はないのか、今一度考えてみることをお勧めします。
そして、導入の際には、どのような会計システムにすれば、混乱なくスムーズに進むかを計画する必要があります。